子どものいない夫婦が遺言を残した方が良い理由

法定相続人は誰?

人が亡くなると、亡くなった人(被相続人)の財産に関する権利義務を相続人が継承します。誰がどのような割合で遺産を相続するかは、民法で定められており、これを法定相続人といいます。
では、子どものいない夫婦の法定相続人は誰になるのでしょうか?
まず、配偶者は必ず相続人となります。次に、被相続人に子がいる場合は子が、子がいない場合は親が、子も親もいない場合は兄弟姉妹が相続人となります。
下の図のようなケースで夫が亡くなった場合、配偶者である妻の法定相続分は4分の3、夫の姉は4分の1となります。

遺言書を書かずに相続が発生したら?

夫が遺言を書かずに亡くなった場合は、法定相続人である妻と夫の姉で遺産分割協議を行うことになります。この場合、遺産総額は3,000万円なので、

法定相続人法定相続割合相続金額
4分の32,250万円
夫の姉4分の1750万円

となります。
仮に夫の姉が法定相続分を主張した場合、妻は現金(預貯金)500万円に加えて250万円を工面するなどの必要が生じます。
子どものいない夫婦で、夫が亡くなったときには全ての財産が妻に相続されて当然と考えている方は多いと思いますが、法律上は兄弟姉妹にも法定相続分があります。

配偶者だけに財産を相続させるには?

夫が遺言を残すことにより、全ての遺産を妻に相続させることが可能となります。兄弟姉妹には遺留分がないため、不備のない遺言書で「全ての財産を妻に相続させる」と書かれていた場合、夫の姉には相続分を主張する権利がなく、争うことなく妻が全ての遺産を相続することができます。
自分の死後も大切な相手を思いやり、残されたパートナーのために今のうちに出来るのが、遺言を残すことです。

遺言は公正証書遺言をお薦めします

遺言には主に、自筆証書遺言と公正証書遺言という2つの方式があります。

■自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者が全文・日付・氏名をすべて自書しなければばりません。他人の代筆はもとより、パソコン等で作ったものは自筆ではありませんので無効となります。なお、全文とは、本文(遺言事項を書き記した部分)のことであり、財産目録については自書を要しません。その場合は、財産目録の各項に署名・押印を要します。遺言書に印を押し、封筒に入れ、本文で使用した印を使用して封印をして保管します。
手軽に作成できますが、紛失や偽造、隠匿の危険があります。

■公正証書遺言

公証人と証人2名以上の立会いのもとに公証役場で作成されます。作成に手間と費用がかかりますが、遺言の内容が確実に実現される可能性が高いことが特徴です。
遺言書の原本は公証役場に保管され、正本・謄本が遺言者に交付されます。
なお、自宅や入院先での作成も可能です(別途費用が加算されます。)。

遺言の目的である「遺言者の意思を死後実現し、相続争いを防ぐ」を達成するためには、より安心な公正証書遺言の作成をお薦めします。
しかしながら、手間や費用の面から自筆証書遺言を選択される場合は、「自筆証書遺言書保管制度」を活用しましょう。

自筆証書遺言書保管制度とは
2020年7月10日に「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が施行され、公的機関(法務局)で遺言書を保管できるようになりました。
紛失や隠匿等の防止、存在の把握が容易になることから、遺言者の最終意思の実現や相続手続の円滑化などの効果が期待されています。

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